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【感想文】水面下の子供たち

伊坂幸太郎『サブマリン』
2017年10月29日読了



待ちに待ったサブマリン。
1日で読破しましたサブマリン。

およそ10年前、『チルドレン』を初めて読んだ時から伊坂作品の中で大好きだった
あの陣内が出てくる作品の長編続編だよ!やったね!!
陣内は相変わらず「なんなんだよ」って言われる男、陣内だった。


今回は武藤が語り手の長編。
『チルドレン』から10年、陣内と武藤は、また同じ上司と部下として働いていた。
無免許運転で殺人事故を起こしてしまった、棚岡佑真少年の事件を軸に展開する。


何が良くて何が悪いのか、表面に出ている情報だけで判断するには難しい。
武藤たちは潜水艦のように、表面だけで判断できない、子供たちの真相を探る。

(恐らく表紙の3人は、棚岡佑真少年と、試験観察中のハッカー小田山俊、過去に陣内が担当した若林青年を表しているのではないかと思います。)
(結局この話の中で問題とされていた棚岡少年の判決に結論は出ないけど、)
読後の余韻は、決して悪くない。

『バイバイブラックバード』や『残り全部バケーション』もそうだったけど、
最後の最後は読者に想像させる…というか、祈らせるパターンだったな、と。

"どうして人を殺してはいけないの?"
"どうして人殺しが死刑じゃないの?"

もちろん、チルドレンの時も言っていたけれど、みんながみんな更正できるわけじゃない。
でもこの小説の中の罪を犯す少年たちには、"犯罪者"という
一言の言葉で表してはいけない経緯がある。

なんだかんだで陣内ってやっぱりすごい。陣内は、本当に、なんなんだろうね。
現実ではこんなこと有り得ないし、めちゃくちゃ非現実的かもしれないけど、
現実に起こる少年犯罪を見ているわたし達は、何を考えられるだろう。

サブマリンに乗って見なければ、わからないものがある。


以下、好きな言葉の個所。

p179.
<クレームではないんです、教えてほしいだけなんですよ。>(中略)
<問い合わせ窓口、どこにあるんですか>

p170
<「陣内さん、言い方を正す会として抗議します」
「抗議を認める」>







※以下ネタバレ腐語り※陣鴨








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【感想文】編集者と霊、(彼にとっては)どちらが恐いか。

木犀あこ『奇奇奇譚編集部〜ホラー作家はおばけが怖い〜』
KADOKAWA(角川ホラー文庫)、2017.9.28.読了。




怖がりなホラー作家の主人公と、鬼畜編集者の2人が、「究極のホラー小説」を求めて(主に編集者の方)、ネタを探しに心霊スポットを巡っていく話。
この主人公のホラー作家・熊野(ゆや)さんは、霊が「みえる」人。なおかつ感じられる人。
彼の担当編集者の善知鳥(うとう)さんは、霊がみえないけど霊に強い人。
そして小説のネタのためなら、どんなに熊野さんが怖がっても逃げることを許さない鬼畜でもある。

収録されている二編のうち、
『幽霊のコンテクスト』はホラースポットを巡りながら小説のネタを探しているうちに、
これまでに出会った霊たちのある共通点に気付き、その謎を解明していく。
『逆さ霊の怪』では2人の出会いが描かれたホラー。
詳しいあらすじはいろんな所で読めるから割愛します。

二編とも、非現実的な「霊」の怪奇現象が起こるのですが、
その「霊」の概念が(個人的に)覆される話でもありました。
この小説内で語られる「霊」は、ただの「霊」ではないです。

そしてただのホラー小説じゃないです。かなりコメディ色が強い。


超絶ビビリな私は初っ端の「びったんびったん」と「逆さ霊」の一連の流れにビビりましたが(他レビューや評でも怖さがないとか書かれていたけど)、そんな私でも読了できたので、超絶ビビリマンな方でも大丈夫なホラー小説…だと思います。
キャラクターに助けられながら読めるというところもあったかもしれない。

特に、ホラー作家の熊野さんが、怖がりなのに頑張って怖い霊たちから言葉を理解しようとする姿が、とても健気です。

自分を怖がらせた霊なのに「あの子」とか「あのこたち」って言うのが可愛い…そして優しい。
でも編集者の善知鳥さんが、熊野さんが苦しんでいても霊から逃さないようにしてるのが、ちょっと可哀想と思ってしまった。熊野さんの苦痛の描写がある分、読んでてこちらも感情移入してしまってちょっとつらい…。
ただ善知鳥さんは仕事や小説に対して厳しいだけで、実はちょっと優しいひとなんじゃないかとも思えます。ちゃんと労う時は労いの言葉をかけてくれるし。そう、彼は仕事に厳しいだけです。
まぁ基本、たいへん おにちく ですけど。
(そういえば帯に毒舌って書いてあったけどそこまで毒舌では、ない…?)


霊の登場シーンはちょっと怖いけど、みんなどことなく可愛げがあり、そして色々なもののネーミングがすごくツボにきます。かわいい。
あと所々のエピソードが、とんでもないことさらっと語られてたりで(善知鳥がトイレに霊を流した、熊野が霊に呪いをかけられ三日三晩吐いた等)そのあたりがすごいセンスだと思いました。
『さもなくば胃は甘海老でいっぱいに』のくだりとか、読んだ瞬間の内容が可笑しくて笑えたのですけど、意外にもまじめな方向に進むための伏線だったりで笑ってる場合じゃなかった。

私は2人の出会いを描いた『逆さ霊の怪』の方が好きです。
熊野さんが幽霊を恐れる理由とか描写がこちらのが具体的にあり辛さがわかって怖いのと、
善知鳥さんのきちく度数がこちらの方が高くて恐い。あと霊もこっちのが怖い(当社比)。
そしてその「霊」の正体に驚き。そういうのもあるのか…!と。

あとは、この小説の初出が単行本(ハードカバー)でなく、文庫で出されたのって、善知鳥さんが持ってる文庫と合わせてるのかなぁと思いました。

主役二人の個性が強いし、表紙の絵も相まってすぐにでも漫画化できそうと思いました。
個人的に好きなシーンで、ぜひ映像で見たいのが
ぶぶぶを追い払うために目がすわってる善知鳥さんが熊野さんを容赦なくばしばしたたくところと、
もの次郎が熊野さんと同じように善知鳥さんの言葉に耳を傾けているシーンでした。
アニメはノイ○ミナ枠でお願いします(見る)


<ーーー以下、いつも通りちょっと腐った目線でお送りしますーーー>


熊野さんが怖がりなのに終始霊に優しいのがほんと尊い。そしてつらい。そして尊い。
過去にすごく辛い、それこそ死の恐怖を味わったからこんなに怖がりになったのかなとか考えてしまった。それだったら今の状況(常に怖い体験をさせられてる状況が)えらい可哀想だけど…。でも多分、続編とかで、熊野さんが霊のせいでもっと苦痛にこらえる描写があったりしたら怖かっただろうな(それだと若干ぐろになりかねない…?)
そして善知鳥さんも過去に何かあったのかと思わせる所があって。(母親もしくは家族関係で)
それで「みえる側」の熊野に対して厳しいのは、嫉妬に似た感情を持っているのか?とか。
常に営業向けの笑顔作ってるので、いつか続編とかでこの人の本当の笑顔が見れるといいなあ。

ラスト、善知鳥さんが持ってる文庫本の正体(作品)に萌えと心の叫びが収まらなくなりました。
うとうさんずるい…超ずるい…!!!!
あと善知鳥さん、魔法使いでした。(p.52)(誤解が生まれる表現)






さて熊野さんにとって、善知鳥と霊はどちらが恐いのだろう。









以下ちょっとそれる話。








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【感想文】絆のはなしだよ

伊坂幸太郎×斉藤和義『絆のはなし』



伊坂幸太郎氏が、大ファンであった斉藤和義氏と対談。伊坂幸太郎の小説『アイネクライネ』と斉藤和義『ベリーベリーストロング〜アイネクライネ〜』のコラボにより実現。


『アイネクライネ』が出会いとか恋愛の話なので、対談内容も出会いとか恋愛とか、お二人のこれまでとこれからについてのインタビューがメイン…かな?
あとはそれぞれの年表や仕事道具、好きな音楽・映画・本などをとても細かく載せられています。最後には100の質問。
たいへん細かく詳しく書かれているので、両者ファンには必読か。


私はどうしても伊坂さん目的で読み始めたので、伊坂さんに注目して読んでしまうのですが、斉藤さんは楽曲は有名なものをちらほら聞いていた程度なので、こんな感じのお方なのだなぁと、曲の雰囲気そのまんまの方だと思いました。


伊坂さんが斉藤さんのファンであったことは伊坂ファンも周知の事実。
なので伊坂さんが終始楽しそうに感じました。笑
斉藤さんの楽曲聞いて、毛嫌いしていた絵文字を思わず使っちゃう伊坂さんは可愛いヽ(´▽`)/


p47<伊坂「本は傷付いた人を救わないというのがわかったのもそのときです。」>
失恋して、ショックで本が読めなくなってしまった時のこと。
ボウリングに夢中になってたらしい。
他にも結構体を動かされていることに驚き。本人のスポーツ経験は時々作品の中に垣間見えてますね。

伊坂さんは自分の作品を完成させるたび「これは世界が変わってしまうぞ!」と思ってて、(p.90)でもなんともなくて〜、って話されているのだけど。
その瞬間には何もないけれど、伊坂幸太郎の作品を読んで、世界が変わった読者はたくさん居るんだろうなぁと思いました。


*「初めまして、結婚してください」ってすごく伊坂っぽいセリフだなぁと思ったけどこれみえるひとのガクリンがやってたわ。
*18歳で『クリスマスを探偵と』を書いたのすごい……絵本発売楽しみです。
*年表で、鴨居が主人公で自殺しようとしていて陣内と永瀬に会う話を書いたとあって、チルドレン大好きな私大反応。

100問アンケートのお二人の対比がめちゃくちゃ面白いし伊坂さんの答えが可愛い。
「理想の死に方」と「明日死ぬなら最後の晩餐は何にする?」の質問に
「怖くて考えたくない」とか。
あと女性に言われてショックだった言葉に
伊「(幼稚園の時)ついてこないでよ」斉「(フラれた時)ついていけない」
という漫画みたいな対比にときめいた。
伊坂さんが斉藤さんについていけば丁度いいんじゃないかな?
この質問の答えもお二人の個性が爆発してました。面白い。
マイペースでつかみどころがないお二人は、どこか似ている気がするなぁとも思いました。


読んでいて気付いたのですが、この本って2007年初版なのですね。
中で「10年後の自分はどうなってると思いますか」って質問があったのだけど、伊坂さんp58<「10年後も小説家やっていたらすごいと思う」>って言ってた。
10年経ちましたが、あなたは今も超人気作家ですよ・・・。
息子さんに存分に胸を張っててほしいですね。

以下、印象に残った個所。


p.90
<――伊坂さんは『オーデュボンの祈り』を出されたときに、「これ出したら世界が変わるんだ!と思っていたのに、意外と世界は静かだった」とおっしゃってましたけど。>
毎回そんなにやばくなかったらしい。今やミリオン作家やであんた・・・。

p.94
<伊坂 そうなんですよ。でも、やらないで嫌と言っているのも嫌なので、やってみようとは思ったんです。なんか、やらないで文句をいう人が苦手で。(中略)まずはやってみればいいじゃんと思っていたので、自分もやってみて、ダメだったらダメというようにしようと、そういう気持ちがあるんですよね。(後略)>
伊坂さんは王道を書くのが嫌だったり、ラブストーリーを書くのが嫌だったりした。けど、それができない(書けない)だけだろ、と思われたら悔しいから、やってみることにした。
自分が書いたら、王道のものでも、自分だけのオリジナル・少しは違うものができたんじゃないかな、と。







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【感想文】星の数ほど物語は生み出されて

2017.9.21読了//『ボッコちゃん』星新一著
1971.5.25.新潮社発行、文庫



星新一の傑作選ショートショート。

『おーいでてこーい』は昔から話に聞いて知っていたけれど、他のものを読んだことがなかったので読んでみました。

"意味がわかるとこわい話"とか"世にも奇妙な物語"みたいな。
きっとそれらの元祖がこの星新一ショートショートなのかも。

電車の中で立ってる間のちょっとだけ・・・と読み始めたら、一篇3分くらいで読み終えるものもあって、どんどん読めてしまうし、なにより起承転結が早くて面白い。そのうえミステリーも、サスペンスも、ファンタジーも、SFも、コメディも、全部詰まってる。
ファストフードなのにこんなに栄養バランスよくて美味しくてコスパ最高じゃない?って気分。

書かれる物語は、宇宙、博士の研究、富豪、金庫、泥棒、殺し屋、エヌ氏が何回も出てきて、似た設定なのに、全て異なる物語だし全く違う味がするのがすごい。


何年も前に書かれた物語なのに、どれも現代に通じる風刺のよう。人間たちへむけた人間を揶揄した物語は、時に残酷、時に爽快、時に幻想、時に愉快。
人生にはこんなジョークが必要だ。



『月の光』(富豪が飼う、美しい混血の「ペット」は、富豪からしか餌を食べない。幻想的で切ない)
と、
『愛用の時計』(男が一目惚れして購入し、何よりも大切にしていた時計が、ある日突然故障して、乗るはずのバスに乗り遅れてしまった)

上記2作品が特に好きでした。





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【感想文】海で戦い、海に生き


アーネスト・ヘミングウェイ著、 福田 恆存(ふくだつねあり)訳
『老人と海』


毎度おなじみ(?)名作を読んでみたかった週間で読んだもの。
「かつては腕利きだった漁師の老人が、しばらく漁に恵まれなくて、ようやく大物を引いて、釣り上げて、帰るまでの話。」
と、いう話だと聞いていたので、途中まで読んで、マジで本当にそれだけの話かよ…とぶっちゃけ飽きてました。読み進めるのがとてもつらかった。
漁の状態とか、モノの姿形が全く想像できなくて、映像が頭に浮かばず、だから読みづらかったのです。

そんな時にネタバレを読んで結末までのストーリーを知ったら、とても読みたくなってすぐ読み終えてしまった。
だって序盤は少年と老人のほのぼのから始まり、中盤の終わりまで巨大マグロとただ綱引きしてるだけじゃん!「お前とおれは兄弟だ!」って老人が疲れたり元気になったりしてるだけじゃん!!!!うまく読解できてなくてすみませんね!!!でもこれ読書感想文だから!!!正直の感想だから!!!!!
でもその後、釣り上げたマグロが全部サメに食われて結局何も残らない、という結末を知って、すごく興味が沸いたんです。その時、老人はどんな感情を見せるのだろうか、と。

実際は読んでみたら、結果は残らなかったものの、過程がわかる証拠は残っていたわけで(巨大マグロの骨と尾)、自身の威厳を、現役であることを知らしめることができたと匂わせるような終わり方で、とても好みでした。休息をとる老人の傍には、唯一彼を信頼していた少年が見守っている。そのシチュエーションも好きでした。

モノによっては、ストーリーを把握してから読んだほうが良い小説もあるものだと実感しました。


以下、個人的に好きだったところの感想。
少年と老人の関係。






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