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【感想文】Re:Re:Re:Re:Re:

【感想文】『Re:』野島 伸司

p39.<私達五人は、今日、集まって一緒に死ぬ事になりました。>





担任の教師へ、女子生徒5人から遺書のようなメールが届く。
5人で自殺をするという内容に加え、その中の1人だけ返信をした生徒のみ自殺を思い留まらせることができる、と。
そして彼女たちが教師を選んだのは、ある理由があり……。



<先生、私に返信して下さい>
<先生、お願い、私に返信して下さい>
<先生、私に返信してみます?>
<お願い、私に返信して下さい>
<先生、私に返信してくれますか>

ここだけ集めるとヤンデレハーレム的なアレ。



それぞれの人生観と自殺理由の告白。
17歳という多感な、自分の中と外の世界に揺れる時期。
彼女たちのメールから繋がってゆく教師との共通点。
これは悪戯か、真実か、悪夢か、現実か。



なぜか「読みたい本リスト」の中に入っていた小説。なんで入っていたのか。
多分自殺をほのめかす小説が読みたかったんじゃないかな。

読了後はまず終わり方に大混乱。
結局どれが現実なのか、何が真実なのか。
良いこと言ってたのに最後のあれで全部無くなった…あれがなければ普通のイイハナシダッタノニナー。(でもそれはそれで面白くないかもしれない)

他のレビューでも見たけど「世にも奇妙な〜〜」でドラマ化すればこの終わり方でも悪くないかも…?賛否両論はありそうだけど。
まあ最後がなければなんて言ってしまうと著者や小説に対して敬意がないと思うのだけど、最後に読者を混乱させるのは意図的なんだろうけど、ちょっと私はついていけなかったかなぁ…。
もしかして「俗に言う青春小説なんてあまづっぱいもんにはさせねえ」っていう心意気な気もしてきた。


一瞬、ケータイ小説への揶揄かな?って思ったけど、女子高生が主役のケータイ小説が流行っていた頃は2007年くらい、この本が出版されたのは2012年くらい。もうケータイ小説が下火の頃ですね…。



17歳の頃は、やはりこじらせてしまう何かがあるのかもしれない。
「17歳」が「いちばん綺麗な瞬間」と思えるのは女だけだと思っているよ。
ああでも、p163<晩年、全ての男性に、生涯で心に残る女性はいるかという質問をしたら、必ず一人の顔を思い浮かべるといいます。それはたいてい今の彼女ではなく、奥さんでもなく、思春期に出会った誰かなのだそうです。>
からの流れは、綺麗だなと思いました。
p164<エロスを遮断した代わりに、タナトスに向いていったのだと思います。>
肉体的な関係を持ってしまえばそこに満足してしまう。
肉体関係を持っていなかったからこそ、永遠の想い出に残る。
そこはとても好きでした。
散々ラストふが云々言ってるんだけど、
それがあったから、不思議と嫌いじゃないのかもしれない。

センチメンタルな檻で、17歳の君を氷漬けにする。








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【読書感想文】帝王と呼ばれる声

森川智之『声優 声の職人』



日本全国の女子のお世話してる系声優・森川智之さんの本。
声優全般の仕事の話というより、森川智之さんの声優としての仕事の話。
彼がどういった信念で声優という仕事をしているのか。
彼をここまで大きくした下積み時代や経緯など。

私はお世話されてるうちのひとりなのでもちろん楽しめました。声優ってそんなに詳しくないんですけど、どんな風に声優が生まれるのか、どんな風に仕事しているのか、簡単に知ることができました。

最近よくある俳優が声優をやることについてとか、読んでいてなるほどなと思ったり。演じるという点では変わらない。

映画『アイズワイドシャット』は絶対見て見ようと思った。そんな思いのこもった森川さんの声を聞いてみたい
そして最近の映画もそれくらい力を入れて声優さんを選んでほしい。


巻末に21ページにおよぶ森川さん出演作品の紹介があったり、途中「編集者所蔵のもの」が出てきたり、この本、たぶん編集者の趣味でできたのではと思ってしまった。たぶん。





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【感想文】「あの緑の車はどうなったの?」

伊坂幸太郎『ガソリン生活』(2017/11/29読了)

伊坂小説の人外キャラはなんて可愛いのか!



望月家が所有する緑のデミオが主人公。彼の視点でつづられるミステリー。
彼は語り部であり、第三者視点で物語に参加するキャラクターでもある。

初心者ドライバーの望月良夫(20/お人よしの名前通りのグッドマン)と
同乗した弟の亨(10/望月家で一番精神年齢が高くて頭が切れる)が
突然、有名女優の荒木翠を乗せることとなり、
その直後、別の車に乗った彼女がトンネルで交通事故を起こし死亡した。
しかし、次第にあるうわさが車たちのなかで立ち始める。
「それは本当に交通事故だったのか?」
荒木翠の不倫報道や、交通事故の瞬間を捉えた新聞記者の証言。
そして最近、妹の交際相手がどうも怪しい。
個性的な望月家(とデミオ)がトラブルに巻き込まれていく、ミステリー。

一人称小説なのに第三者視点であり、登場人物とは関わることができないデミオ。
彼に乗る登場人物の行動・会話から紐解いていくミステリーは新鮮だった。

緑デミは車内に乗った人々や周りの車から物語を見つめていて、
我々は彼から物語を聞かせてもらってるイメージ。
感情はあるのに、自分たちではどうすることもできないのがまたもどかしい…。
盗まれてても、「ぼくが盗まれているんだ!」と助けを求めても無駄だとか悲しい…。
タイヤの数が違うからバイクとは会話ができないとか、驚いたときに「ワイパーが動くぞ!」と表現したり、
怒りでクラクションが鳴るとか、独特の感情表現も面白かった。
登場する車も様々なので、車種がわかるとなお楽しめる車好きのための小説でもあるかもしれません。

そしてまさか小説でカーチェイスが読めるとは思わなかったし、
ブルーバードがどさくさに紛れて走って行ったのが良かった(笑)
車も走馬灯をみるんだなぁ(笑)

「あの緑の車はどうなったの?」
まさに私がその気持ちで読み続けていました。

エピローグも素敵で、もしかして実は亨は車たちの言葉を少し理解できてたんじゃない?なんて。
中古店で亨を見た時の緑デミはきっとワイパーが動くほど驚いて大はしゃぎだったに違いない。
泣きそうなくらい、優しいお話でした。これは『夜の国のクーパー』と並べて伊坂童話シリーズと呼びたい…。
朝日新聞夕刊での連載だから、『吾輩は猫である』のような人外視点だったのかな
なんて勝手に思ったり。

そしてお馴染みの他作品とのリンクもちょっぴり。
世の中に父親が五人いる家族が複数あってたまるか。

以下続きはネタバレありの好きな個所の話。
フランク・ザッパを聴け!











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【感想文】「勇者によって魔王は倒されました。」の、その後。

左京潤『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』



何年ぶりかのファンタジア文庫!

そういえばここしばらく剣と魔法の出てくるファンタジーらしいファンタジーな世界の小説を読んでなかったな、ということで。
想像していた通りの、RPGで出てくるような剣と魔法と勇者と魔王が居る世界観に、冒険の旅をするファンタジー
……というわけではなく、どちらかというと、その後の話。

この小説のなかでは、勇者になるための予備校があって、勇者という職業が確立されていて、勇者は魔王を倒しに行くことが仕事となっている世界。
しかしその魔王が倒されてしまったので、勇者という職業が廃業。勇者を目指していた主人公のラウルは予備校卒業後、しぶしぶ別の職業(マジックアイテムショップ小売店)へと就職し……。

と、完全ファンタジー世界なのにめちゃくちゃ現実的な設定をつきつけられて、
自分の新卒の頃を思い出し、早々に心が痛みました。
ラウルくんはもともと学校で優秀だったようだし、
期待のある周りからの目とかも気にするよね…。
加えて人員不足やら休日出勤やら意思疎通のできない上層部やら
ファンタジー世界なのに容赦ない非ファンタジー感。割り込んでくる日本風な現実。
でもそれが、逆に親しみやすくて笑ってしまいました。社会人あるある……。
ということで、がっつりファンタジー世界小説かとおもいきや、
先輩&新人が頑張る小売り系お仕事小説でもあります。

魔法発動の仕方とかも、ちょっと科学っぽくて、すこしSFっぽくもありました。
売られているマジックアイテムも、仕組みは魔法だけど、機械のようにプログラムされていて、
魔法のプログラムが粗悪だと不良品となり、ただじゃ済まないモンスター化してしまうというのがひどい(笑)

ラウルは、人間界の常識が全く通用しない新人(フィノ)教育に悩むけど、
めちゃくちゃだけど、根は本当に頑張り屋のフィノちゃんが
とても良い子…えらい…かわいい。そして守りたいあの笑顔…!







あとあの、お兄さん、多分(生きてるんじゃないかな)と思ってしまった。
死んだってはっきり言われていないの気になるし)!笑
完結済みなので好きな時にまた続き読んでみようかなと思います。

そういえば私、最初、(ラウルくんはフィノちゃんを男の子と勘違いするのですけど、表紙のおっぱい袋エプロンから女の子というのはわかっていたので「もしかしてフィノちゃんは性別を自由に決められる魔族なのでは?!」)と勝手に期待したことは内緒です。
あと絶対この店長強いだろうなと思っていたら(案の定強さが半端じゃなかった…やっぱり魔王倒したのこの人だった…)。
あとバイザーさん一瞬だけでいいんで彼関係でシリアス展開になる話とかありますかね……
(私はバイザーさんが好きです)


夢が無くなって、うじうじと未練がましく生きるより、
視野を広げてみれば案外、今の状態だって悪くないんだよね。







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【感想文】ああ無情、なる、黒澤の災難

伊坂幸太郎『ホワイトラビット』



新潮社なので副題は「a night」
つまり、ある一晩の、立てこもり事件の話。

主役という主役は特に決まっていないのだけど、
・立てこもり事件をおこした兎田、
・立てこもり事件の犯人と交渉する警察夏乃目、
・いつも通り仕事する黒澤
を、メインに話は進んで行きます。

全体を通してみると、
黒澤が無情にも災難に巻き込まれていく話であった。(ああ、無情)

簡単な冒頭あらすじ
悪い組織で働く兎田という下っ端の男は、
新婚なのに、組織に愛妻の綿子ちゃんを誘拐されてしまう。
返してもらう取引内容はただひとつ「折尾を連れて来い」というもの。
同じ組織の裏切り者・折尾という男を追っている組織の主犯・稲葉の命令により、
兎田は必死に折尾を探すが、つけた発信機を辿った先の一軒の家の中で、
ひょんなことから立てこもることになってしまう。

そして別の時間軸では、おなじみ黒澤、中村、今村、の3人が、
ある盗みを企てていた・・・・・・。


ばらばらの人物が1つの大きな道の上につながる流れは
相変わらずお見事としか言えないし、
伏線回収はまるでジェットコースターだし、
ああ、伊坂幸太郎読んだな!って気分。
p182で「え?」って言って、p183で「は?」って言って
10回くらいそこのページ読み返してた。

イレギュラーな状況でも冷静な黒澤はどこか抜けてるし、
中村今村親分子分に付き合ってる黒澤も大概だと思う。
クールで無表情で淡々とした黒澤に惚れ直す一晩でした。

今回の読みどころは、ある意味で「語り手」もひとりの登場人物であることだと思う。
途中で個人的な感想を交えたり、話を逸らしたり、
これから起こることを少しだけネタばらししたりと、個性がある。
p173のTVアナウンサーとレポーターのやりとりに
「だから!犯人が観ていたらどうするの!」
って言っちゃうので、ちょっと愛着がわいてきます。かわいい。(笑)
『レ・ミゼラブル』をオマージュしてるようです?

今回のキーワードは、『白兎、オリオン座、レ・ミゼラブル』
p38<「すでに起きてる出来事も、時間がずれないと見えないわけだ」>

警察の方もなかなか濃いキャラ設定があるようですが、
伊坂先生がインタビューで深く掘り下げてみたいと
言っていたのは夏ノ目刑事のことかな?
すごくあっさり語られていたけど、彼の話もめちゃくちゃ濃ゆかった…。

あと佐藤家のお父さん、(片足引きずってたから、田中っていう別の登場人物)かと思ってたのですけど、まさかのここで(黒澤が絡んでくる)とは思わず超笑ってしまいました最高です
ある意味、(伊坂ファンに対してのミスリード誘ってたのかも?)とも思えました。



たった一晩の立てこもり事件。
p129-130<「たぶん、ほかにもいます」>


以下、ネタバレありで印象に残ったシーンとセリフ








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