[sor ato e ru]
青空の羽を秘める少年と、堕ちた神の使いに似て非なる者の話
【感想文】「あの緑の車はどうなったの?」
伊坂幸太郎『ガソリン生活』(2017/11/29読了)
伊坂小説の人外キャラはなんて可愛いのか!
望月家が所有する緑のデミオが主人公。彼の視点でつづられるミステリー。
彼は語り部であり、第三者視点で物語に参加するキャラクターでもある。
初心者ドライバーの望月良夫(20/お人よしの名前通りのグッドマン)と
同乗した弟の亨(10/望月家で一番精神年齢が高くて頭が切れる)が
突然、有名女優の荒木翠を乗せることとなり、
その直後、別の車に乗った彼女がトンネルで交通事故を起こし死亡した。
しかし、次第にあるうわさが車たちのなかで立ち始める。
「それは本当に交通事故だったのか?」
荒木翠の不倫報道や、交通事故の瞬間を捉えた新聞記者の証言。
そして最近、妹の交際相手がどうも怪しい。
個性的な望月家(とデミオ)がトラブルに巻き込まれていく、ミステリー。
一人称小説なのに第三者視点であり、登場人物とは関わることができないデミオ。
彼に乗る登場人物の行動・会話から紐解いていくミステリーは新鮮だった。
緑デミは車内に乗った人々や周りの車から物語を見つめていて、
我々は彼から物語を聞かせてもらってるイメージ。
感情はあるのに、自分たちではどうすることもできないのがまたもどかしい…。
盗まれてても、「ぼくが盗まれているんだ!」と助けを求めても無駄だとか悲しい…。
タイヤの数が違うからバイクとは会話ができないとか、驚いたときに「ワイパーが動くぞ!」と表現したり、
怒りでクラクションが鳴るとか、独特の感情表現も面白かった。
登場する車も様々なので、車種がわかるとなお楽しめる車好きのための小説でもあるかもしれません。
そしてまさか小説でカーチェイスが読めるとは思わなかったし、
ブルーバードがどさくさに紛れて走って行ったのが良かった(笑)
車も走馬灯をみるんだなぁ(笑)
「あの緑の車はどうなったの?」
まさに私がその気持ちで読み続けていました。
エピローグも素敵で、もしかして実は亨は車たちの言葉を少し理解できてたんじゃない?なんて。
中古店で亨を見た時の緑デミはきっとワイパーが動くほど驚いて大はしゃぎだったに違いない。
泣きそうなくらい、優しいお話でした。これは『夜の国のクーパー』と並べて伊坂童話シリーズと呼びたい…。
朝日新聞夕刊での連載だから、『吾輩は猫である』のような人外視点だったのかな
なんて勝手に思ったり。
そしてお馴染みの他作品とのリンクもちょっぴり。
世の中に父親が五人いる家族が複数あってたまるか。
以下続きはネタバレありの好きな個所の話。
フランク・ザッパを聴け!
緑デミとお隣の白カローラの通称ザッパとの雑談ややりとりは
いつもの伊坂キャラのコンビって感じでかわいかった。
(お隣の細見氏がフランク・ザッパをよく聞き、彼の言葉を引用するので、車の彼も真似をしてザッパのことをよく話す。だからザッパと呼ばれている。)
(※ページ数は文庫ではなく単行本によります)
p.242<ザッパ、俺は怒りによって、クラクションを鳴らすことに成功したぞ。自力で変形し、ロボットになる車の道が見えた、憧れのオートボットだ、と。>
ここ、唯一緑デミの一人称が「俺」になるのすごくかわいい!
ていうか緑デミが望月家のピンチに必死になってる姿がめちゃくちゃかわいいので大好きなシーンです。
p.250<「俺のナビは、おまえがどこにいても居場所を捉えることができる」
「嘘だろ」「嘘だ」>
ザッパと緑デミのかわいいやり取り。
p.405<「だからさ」ザッパがふと言う。
「だから?」
「俺は、緑のデミオ、おまえにも親近感があるんだ」>
伊坂小説の人外キャラはなんて可愛いのか!
望月家が所有する緑のデミオが主人公。彼の視点でつづられるミステリー。
彼は語り部であり、第三者視点で物語に参加するキャラクターでもある。
初心者ドライバーの望月良夫(20/お人よしの名前通りのグッドマン)と
同乗した弟の亨(10/望月家で一番精神年齢が高くて頭が切れる)が
突然、有名女優の荒木翠を乗せることとなり、
その直後、別の車に乗った彼女がトンネルで交通事故を起こし死亡した。
しかし、次第にあるうわさが車たちのなかで立ち始める。
「それは本当に交通事故だったのか?」
荒木翠の不倫報道や、交通事故の瞬間を捉えた新聞記者の証言。
そして最近、妹の交際相手がどうも怪しい。
個性的な望月家(とデミオ)がトラブルに巻き込まれていく、ミステリー。
一人称小説なのに第三者視点であり、登場人物とは関わることができないデミオ。
彼に乗る登場人物の行動・会話から紐解いていくミステリーは新鮮だった。
緑デミは車内に乗った人々や周りの車から物語を見つめていて、
我々は彼から物語を聞かせてもらってるイメージ。
感情はあるのに、自分たちではどうすることもできないのがまたもどかしい…。
盗まれてても、「ぼくが盗まれているんだ!」と助けを求めても無駄だとか悲しい…。
タイヤの数が違うからバイクとは会話ができないとか、驚いたときに「ワイパーが動くぞ!」と表現したり、
怒りでクラクションが鳴るとか、独特の感情表現も面白かった。
登場する車も様々なので、車種がわかるとなお楽しめる車好きのための小説でもあるかもしれません。
そしてまさか小説でカーチェイスが読めるとは思わなかったし、
ブルーバードがどさくさに紛れて走って行ったのが良かった(笑)
車も走馬灯をみるんだなぁ(笑)
「あの緑の車はどうなったの?」
まさに私がその気持ちで読み続けていました。
エピローグも素敵で、もしかして実は亨は車たちの言葉を少し理解できてたんじゃない?なんて。
中古店で亨を見た時の緑デミはきっとワイパーが動くほど驚いて大はしゃぎだったに違いない。
泣きそうなくらい、優しいお話でした。これは『夜の国のクーパー』と並べて伊坂童話シリーズと呼びたい…。
朝日新聞夕刊での連載だから、『吾輩は猫である』のような人外視点だったのかな
なんて勝手に思ったり。
そしてお馴染みの他作品とのリンクもちょっぴり。
世の中に父親が五人いる家族が複数あってたまるか。
以下続きはネタバレありの好きな個所の話。
フランク・ザッパを聴け!
緑デミとお隣の白カローラの通称ザッパとの雑談ややりとりは
いつもの伊坂キャラのコンビって感じでかわいかった。
(お隣の細見氏がフランク・ザッパをよく聞き、彼の言葉を引用するので、車の彼も真似をしてザッパのことをよく話す。だからザッパと呼ばれている。)
(※ページ数は文庫ではなく単行本によります)
p.242<ザッパ、俺は怒りによって、クラクションを鳴らすことに成功したぞ。自力で変形し、ロボットになる車の道が見えた、憧れのオートボットだ、と。>
ここ、唯一緑デミの一人称が「俺」になるのすごくかわいい!
ていうか緑デミが望月家のピンチに必死になってる姿がめちゃくちゃかわいいので大好きなシーンです。
p.250<「俺のナビは、おまえがどこにいても居場所を捉えることができる」
「嘘だろ」「嘘だ」>
ザッパと緑デミのかわいいやり取り。
p.405<「だからさ」ザッパがふと言う。
「だから?」
「俺は、緑のデミオ、おまえにも親近感があるんだ」>
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