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【感想文】ああ無情、なる、黒澤の災難

伊坂幸太郎『ホワイトラビット』



新潮社なので副題は「a night」
つまり、ある一晩の、立てこもり事件の話。

主役という主役は特に決まっていないのだけど、
・立てこもり事件をおこした兎田、
・立てこもり事件の犯人と交渉する警察夏乃目、
・いつも通り仕事する黒澤
を、メインに話は進んで行きます。

全体を通してみると、
黒澤が無情にも災難に巻き込まれていく話であった。(ああ、無情)

簡単な冒頭あらすじ
悪い組織で働く兎田という下っ端の男は、
新婚なのに、組織に愛妻の綿子ちゃんを誘拐されてしまう。
返してもらう取引内容はただひとつ「折尾を連れて来い」というもの。
同じ組織の裏切り者・折尾という男を追っている組織の主犯・稲葉の命令により、
兎田は必死に折尾を探すが、つけた発信機を辿った先の一軒の家の中で、
ひょんなことから立てこもることになってしまう。

そして別の時間軸では、おなじみ黒澤、中村、今村、の3人が、
ある盗みを企てていた・・・・・・。


ばらばらの人物が1つの大きな道の上につながる流れは
相変わらずお見事としか言えないし、
伏線回収はまるでジェットコースターだし、
ああ、伊坂幸太郎読んだな!って気分。
p182で「え?」って言って、p183で「は?」って言って
10回くらいそこのページ読み返してた。

イレギュラーな状況でも冷静な黒澤はどこか抜けてるし、
中村今村親分子分に付き合ってる黒澤も大概だと思う。
クールで無表情で淡々とした黒澤に惚れ直す一晩でした。

今回の読みどころは、ある意味で「語り手」もひとりの登場人物であることだと思う。
途中で個人的な感想を交えたり、話を逸らしたり、
これから起こることを少しだけネタばらししたりと、個性がある。
p173のTVアナウンサーとレポーターのやりとりに
「だから!犯人が観ていたらどうするの!」
って言っちゃうので、ちょっと愛着がわいてきます。かわいい。(笑)
『レ・ミゼラブル』をオマージュしてるようです?

今回のキーワードは、『白兎、オリオン座、レ・ミゼラブル』
p38<「すでに起きてる出来事も、時間がずれないと見えないわけだ」>

警察の方もなかなか濃いキャラ設定があるようですが、
伊坂先生がインタビューで深く掘り下げてみたいと
言っていたのは夏ノ目刑事のことかな?
すごくあっさり語られていたけど、彼の話もめちゃくちゃ濃ゆかった…。

あと佐藤家のお父さん、(片足引きずってたから、田中っていう別の登場人物)かと思ってたのですけど、まさかのここで(黒澤が絡んでくる)とは思わず超笑ってしまいました最高です
ある意味、(伊坂ファンに対してのミスリード誘ってたのかも?)とも思えました。



たった一晩の立てこもり事件。
p129-130<「たぶん、ほかにもいます」>


以下、ネタバレありで印象に残ったシーンとセリフ








拍手



p34<「俺には分からない。ただ、おまえが、これで安心ですね、と嬉しそうに言ったら安心するかもしれない」
「名簿がなくてもですか?」
「お前にはそういう説得力がある」>

p37<「黒澤さん、ベテルギウスが爆発すると凄いらしいですね」
「何が凄い」
「爆発の明るさで、地球は三ヶ月くらい、三十日だったかな太陽が二つあるような感じになるんですよ」
「太陽がいっぱい」>

黒澤と今村の会話ってほのぼのしててめちゃくちゃ和むよね。

p98<「いや、俺は父親だ」きっと、何らかの父親だ>
この瞬間心の中で「パパー!!!!」って叫んでた。
黒澤みたいな父親欲しいです…いやでもめんどくさそう。
なんだかんだ黒澤パパは世話焼きなのずるいよね。
中村と今村(と大西さん)に振り回される黒澤はみんなのパパだよ…。

p158<お父さんはわかってないな、と愛華は笑った。「そういう無駄なところが、物語を豊かにするんだから」>
なにか聞いたことあるな…と思ったら、これはもしかして重力ピエロの「地味で、退屈な事柄にこそ、神様は住んでるんだ」では?

p179<「仕事ってのは」(中略)「人の人生の大半を食い尽くす化け物みたいだな」
「仕事がないと、人生が続けられません」
「化け物のおかげで生きていられるわけか」>

p217<(前略)と言いかけたところで黒澤は少し不安になり「無理があるかな?」と急に、友人同士で喋るような口調になった。>
お前ら友達じゃなかったのか…と思ったけど、黒澤ならさらっと「ただの同業者だ」とか言いそう。中村親分は友達と思ってそうだけど。


マリビもそうだけど、たった数時間という短い時間なのにこんなに面白いのすごいよなぁ〜
ホライトラビットに限らずなんですが、伊坂さんて場面を変えて、時間を変えて話を進めるのか本当に上手だなぁと思う。時間が変わっててもちゃんと場面がわかる、というか。読んでてごちゃごちゃにならない。「あれ、語り手いつここの時間に戻ったの?」ってならない。
すごい。
やっぱり改めて、私は伊坂幸太郎作品が好きだと再確認しました。

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