[sor ato e ru]
青空の羽を秘める少年と、堕ちた神の使いに似て非なる者の話
【感想文】編集者と霊、(彼にとっては)どちらが恐いか。
木犀あこ『奇奇奇譚編集部〜ホラー作家はおばけが怖い〜』
KADOKAWA(角川ホラー文庫)、2017.9.28.読了。
怖がりなホラー作家の主人公と、鬼畜編集者の2人が、「究極のホラー小説」を求めて(主に編集者の方)、ネタを探しに心霊スポットを巡っていく話。
この主人公のホラー作家・熊野(ゆや)さんは、霊が「みえる」人。なおかつ感じられる人。
彼の担当編集者の善知鳥(うとう)さんは、霊がみえないけど霊に強い人。
そして小説のネタのためなら、どんなに熊野さんが怖がっても逃げることを許さない鬼畜でもある。
収録されている二編のうち、
『幽霊のコンテクスト』はホラースポットを巡りながら小説のネタを探しているうちに、
これまでに出会った霊たちのある共通点に気付き、その謎を解明していく。
『逆さ霊の怪』では2人の出会いが描かれたホラー。
詳しいあらすじはいろんな所で読めるから割愛します。
二編とも、非現実的な「霊」の怪奇現象が起こるのですが、
その「霊」の概念が(個人的に)覆される話でもありました。
この小説内で語られる「霊」は、ただの「霊」ではないです。
そしてただのホラー小説じゃないです。かなりコメディ色が強い。
超絶ビビリな私は初っ端の「びったんびったん」と「逆さ霊」の一連の流れにビビりましたが(他レビューや評でも怖さがないとか書かれていたけど)、そんな私でも読了できたので、超絶ビビリマンな方でも大丈夫なホラー小説…だと思います。
キャラクターに助けられながら読めるというところもあったかもしれない。
特に、ホラー作家の熊野さんが、怖がりなのに頑張って怖い霊たちから言葉を理解しようとする姿が、とても健気です。
自分を怖がらせた霊なのに「あの子」とか「あのこたち」って言うのが可愛い…そして優しい。
でも編集者の善知鳥さんが、熊野さんが苦しんでいても霊から逃さないようにしてるのが、ちょっと可哀想と思ってしまった。熊野さんの苦痛の描写がある分、読んでてこちらも感情移入してしまってちょっとつらい…。
ただ善知鳥さんは仕事や小説に対して厳しいだけで、実はちょっと優しいひとなんじゃないかとも思えます。ちゃんと労う時は労いの言葉をかけてくれるし。そう、彼は仕事に厳しいだけです。
まぁ基本、たいへん おにちく ですけど。
(そういえば帯に毒舌って書いてあったけどそこまで毒舌では、ない…?)
霊の登場シーンはちょっと怖いけど、みんなどことなく可愛げがあり、そして色々なもののネーミングがすごくツボにきます。かわいい。
あと所々のエピソードが、とんでもないことさらっと語られてたりで(善知鳥がトイレに霊を流した、熊野が霊に呪いをかけられ三日三晩吐いた等)そのあたりがすごいセンスだと思いました。
『さもなくば胃は甘海老でいっぱいに』のくだりとか、読んだ瞬間の内容が可笑しくて笑えたのですけど、意外にもまじめな方向に進むための伏線だったりで笑ってる場合じゃなかった。
私は2人の出会いを描いた『逆さ霊の怪』の方が好きです。
熊野さんが幽霊を恐れる理由とか描写がこちらのが具体的にあり辛さがわかって怖いのと、
善知鳥さんのきちく度数がこちらの方が高くて恐い。あと霊もこっちのが怖い(当社比)。
そしてその「霊」の正体に驚き。そういうのもあるのか…!と。
あとは、この小説の初出が単行本(ハードカバー)でなく、文庫で出されたのって、善知鳥さんが持ってる文庫と合わせてるのかなぁと思いました。
主役二人の個性が強いし、表紙の絵も相まってすぐにでも漫画化できそうと思いました。
個人的に好きなシーンで、ぜひ映像で見たいのが
ぶぶぶを追い払うために目がすわってる善知鳥さんが熊野さんを容赦なくばしばしたたくところと、
もの次郎が熊野さんと同じように善知鳥さんの言葉に耳を傾けているシーンでした。
アニメはノイ○ミナ枠でお願いします(見る)
<ーーー以下、いつも通りちょっと腐った目線でお送りしますーーー>
熊野さんが怖がりなのに終始霊に優しいのがほんと尊い。そしてつらい。そして尊い。
過去にすごく辛い、それこそ死の恐怖を味わったからこんなに怖がりになったのかなとか考えてしまった。それだったら今の状況(常に怖い体験をさせられてる状況が)えらい可哀想だけど…。でも多分、続編とかで、熊野さんが霊のせいでもっと苦痛にこらえる描写があったりしたら怖かっただろうな(それだと若干ぐろになりかねない…?)
そして善知鳥さんも過去に何かあったのかと思わせる所があって。(母親もしくは家族関係で)
それで「みえる側」の熊野に対して厳しいのは、嫉妬に似た感情を持っているのか?とか。
常に営業向けの笑顔作ってるので、いつか続編とかでこの人の本当の笑顔が見れるといいなあ。
ラスト、善知鳥さんが持ってる文庫本の正体(作品)に萌えと心の叫びが収まらなくなりました。
うとうさんずるい…超ずるい…!!!!
あと善知鳥さん、魔法使いでした。(p.52)(誤解が生まれる表現)
さて熊野さんにとって、善知鳥と霊はどちらが恐いのだろう。
以下ちょっとそれる話。
ちょっと逸れるけど、書評で綾辻先生が受賞した『迷い家』のことを『うしおととら』みたいと評されてるのを読んで、むちゃくちゃ読みたくなった…。
そしたらこちらの作品は漫画で例えるなら『夏目友人帳』かな?
優しさと切なさのある霊の話です。
さらに全く関係ないけどこれはもはや私の頭の問題なのですが、馬鹿だから主人公2人の名前を読むたびに脳内で善知鳥をぜんちどりって読みそうになったり熊野さんをくまのとかうのとか読みそうになったりしていた。漢字の勉強しよう…。
言葉の作りの話は、昔勉強していたのもあって懐かしかったなぁ。
KADOKAWA(角川ホラー文庫)、2017.9.28.読了。
怖がりなホラー作家の主人公と、鬼畜編集者の2人が、「究極のホラー小説」を求めて(主に編集者の方)、ネタを探しに心霊スポットを巡っていく話。
この主人公のホラー作家・熊野(ゆや)さんは、霊が「みえる」人。なおかつ感じられる人。
彼の担当編集者の善知鳥(うとう)さんは、霊がみえないけど霊に強い人。
そして小説のネタのためなら、どんなに熊野さんが怖がっても逃げることを許さない鬼畜でもある。
収録されている二編のうち、
『幽霊のコンテクスト』はホラースポットを巡りながら小説のネタを探しているうちに、
これまでに出会った霊たちのある共通点に気付き、その謎を解明していく。
『逆さ霊の怪』では2人の出会いが描かれたホラー。
詳しいあらすじはいろんな所で読めるから割愛します。
二編とも、非現実的な「霊」の怪奇現象が起こるのですが、
その「霊」の概念が(個人的に)覆される話でもありました。
この小説内で語られる「霊」は、ただの「霊」ではないです。
そしてただのホラー小説じゃないです。かなりコメディ色が強い。
超絶ビビリな私は初っ端の「びったんびったん」と「逆さ霊」の一連の流れにビビりましたが(他レビューや評でも怖さがないとか書かれていたけど)、そんな私でも読了できたので、超絶ビビリマンな方でも大丈夫なホラー小説…だと思います。
キャラクターに助けられながら読めるというところもあったかもしれない。
特に、ホラー作家の熊野さんが、怖がりなのに頑張って怖い霊たちから言葉を理解しようとする姿が、とても健気です。
自分を怖がらせた霊なのに「あの子」とか「あのこたち」って言うのが可愛い…そして優しい。
でも編集者の善知鳥さんが、熊野さんが苦しんでいても霊から逃さないようにしてるのが、ちょっと可哀想と思ってしまった。熊野さんの苦痛の描写がある分、読んでてこちらも感情移入してしまってちょっとつらい…。
ただ善知鳥さんは仕事や小説に対して厳しいだけで、実はちょっと優しいひとなんじゃないかとも思えます。ちゃんと労う時は労いの言葉をかけてくれるし。そう、彼は仕事に厳しいだけです。
まぁ基本、たいへん おにちく ですけど。
(そういえば帯に毒舌って書いてあったけどそこまで毒舌では、ない…?)
霊の登場シーンはちょっと怖いけど、みんなどことなく可愛げがあり、そして色々なもののネーミングがすごくツボにきます。かわいい。
あと所々のエピソードが、とんでもないことさらっと語られてたりで(善知鳥がトイレに霊を流した、熊野が霊に呪いをかけられ三日三晩吐いた等)そのあたりがすごいセンスだと思いました。
『さもなくば胃は甘海老でいっぱいに』のくだりとか、読んだ瞬間の内容が可笑しくて笑えたのですけど、意外にもまじめな方向に進むための伏線だったりで笑ってる場合じゃなかった。
私は2人の出会いを描いた『逆さ霊の怪』の方が好きです。
熊野さんが幽霊を恐れる理由とか描写がこちらのが具体的にあり辛さがわかって怖いのと、
善知鳥さんのきちく度数がこちらの方が高くて恐い。あと霊もこっちのが怖い(当社比)。
そしてその「霊」の正体に驚き。そういうのもあるのか…!と。
あとは、この小説の初出が単行本(ハードカバー)でなく、文庫で出されたのって、善知鳥さんが持ってる文庫と合わせてるのかなぁと思いました。
主役二人の個性が強いし、表紙の絵も相まってすぐにでも漫画化できそうと思いました。
個人的に好きなシーンで、ぜひ映像で見たいのが
ぶぶぶを追い払うために目がすわってる善知鳥さんが熊野さんを容赦なくばしばしたたくところと、
もの次郎が熊野さんと同じように善知鳥さんの言葉に耳を傾けているシーンでした。
アニメはノイ○ミナ枠でお願いします(見る)
<ーーー以下、いつも通りちょっと腐った目線でお送りしますーーー>
熊野さんが怖がりなのに終始霊に優しいのがほんと尊い。そしてつらい。そして尊い。
過去にすごく辛い、それこそ死の恐怖を味わったからこんなに怖がりになったのかなとか考えてしまった。それだったら今の状況(常に怖い体験をさせられてる状況が)えらい可哀想だけど…。でも多分、続編とかで、熊野さんが霊のせいでもっと苦痛にこらえる描写があったりしたら怖かっただろうな(それだと若干ぐろになりかねない…?)
そして善知鳥さんも過去に何かあったのかと思わせる所があって。(母親もしくは家族関係で)
それで「みえる側」の熊野に対して厳しいのは、嫉妬に似た感情を持っているのか?とか。
常に営業向けの笑顔作ってるので、いつか続編とかでこの人の本当の笑顔が見れるといいなあ。
ラスト、善知鳥さんが持ってる文庫本の正体(作品)に萌えと心の叫びが収まらなくなりました。
うとうさんずるい…超ずるい…!!!!
あと善知鳥さん、魔法使いでした。(p.52)(誤解が生まれる表現)
さて熊野さんにとって、善知鳥と霊はどちらが恐いのだろう。
以下ちょっとそれる話。
ちょっと逸れるけど、書評で綾辻先生が受賞した『迷い家』のことを『うしおととら』みたいと評されてるのを読んで、むちゃくちゃ読みたくなった…。
そしたらこちらの作品は漫画で例えるなら『夏目友人帳』かな?
優しさと切なさのある霊の話です。
さらに全く関係ないけどこれはもはや私の頭の問題なのですが、馬鹿だから主人公2人の名前を読むたびに脳内で善知鳥をぜんちどりって読みそうになったり熊野さんをくまのとかうのとか読みそうになったりしていた。漢字の勉強しよう…。
言葉の作りの話は、昔勉強していたのもあって懐かしかったなぁ。
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