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【感想文】極端にしすぎたら、あの行為なんて一種の殺人にすぎな い。

2013/01/23

我孫子武丸『殺戮にいたる病』
p30「男はすべて、女を殺し、貪るために生まれてきたのだ」

猟奇的殺人犯の蒲生稔と、
最近起きている殺人事件の殺人犯が息子なのではと疑っている雅子と、
元刑事の樋口の視点で進んで行く、サスペンスミステリー。
そして叙述トリックもの。

エピローグがプロローグ。


***以下、内容がグロテスクなので隠します***







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p13「所詮奴等は猿同様の馬鹿なのだ。いや、年中発情しているぶん、猿より始末が悪い」
p30「彼がこれまで経験してきたものは、本当のセックスの真似事、“愛”の名の許に行われる相互マスターベーションにすぎなかった。」

エログロな残酷さの描写や最後の1pが注目されまくってて、
叙述トリックのサスペンスなのは間違いないのですが…。

個人的に、これは悲しい話でした。
相手を殺すことでしか「愛」を感じられない蒲生稔にとって
この世界はあまりに生き辛い。
だからと言って同情はしません。全く。

性行為を「殺人の寓意にすぎない」と書いたりするあたり著者はよくわかってらっしゃる。←
所詮、性行為は支配であって、対等な立場なんて存在しないし、
それを極端に表した行動が蒲生稔の行動なんだろうな。

女性が殺されていく描写はエンターテイメントのひとつに思います。
こんなの小説じゃないと読めないしリアルにあったら顔を顰めるに違いない。

「大理石のような女」「水晶のような声」女性を賛美する言葉は綺麗で素敵だったけど、
そのあとに起こる描写とのギャップが残酷さを際立たせている。



p82「生きるに値しない世界で、生きるに値しない人間が生き延びている。
   ジョークだった。この世はすべて、笑えないジョークでできているのだと彼は思った。」

蒲生稔はネクロフィリア、そしてナルシストなんじゃないかな。
厨二病なんて行きすぎたナルシシズムにすぎないと思うのですよ。私も例に漏れず。
蒲生稔が彼の感じる「愛」に打ちひしがれて居る時は感動した。
極端にしすぎたら、やっぱりセックスなんて殺人にすぎない。


作者のあとがきはいくつか頷けるところも、興味をそそられる部分もありました。今度じっくり読みたい。
ああ面白い。面白かった。これは再読したくなる。





この本よりも精神的にキツかった残虐描写は佐藤友哉の「子供たち、怒る、怒る、怒る」の牛男でした。
あいつは正体不明なだけに可哀想とも思えないし吐き気がする。

p152「死というものには抗いがたい魅力がある、そうは思わないかね?」


どうして樋口と雅子の語りと、稔と語りにズレがあるんだろう?とか考えたけど、あんまり重要じゃなかった。


以下ネタバレ。















雅子オオオオオオオオ!!!!お前のせいで騙されたじゃねえかどうしてくれる!!!!!
それくらい“最後の一行”はポカーンとします。ほんと。

ぶっちゃけ中盤までは稔に同情に近い情を感じていたけど、
ラストに向かうにつれてやっぱり異常だと感じさせられた。

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