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FANTASY STORY 6

「コルト!」
突然呼ばれた名前に目が覚めたような気がした。
振り向くと、ひどく息づかいが荒くなったシィナが
腰を曲げて呼吸を整えているところだった。
彼の綺麗な水色の髪が、コルトには少し眩しく見えた。
恐らく、名前を呼べたことが精一杯だったのだろう。語尾がかすれて聴こえたからだ。
彼の肩はゆっくりと大きく上下にゆれている。
それと比べて、先程よりもゆっくりと呼吸をしている子兎。
もう恐怖はなくなったのだろうか。
「コルト、ひとりで、先、行っちゃ、うんだ、もん……。
 おォ、おいて、行かれ、ないよう、に、がん、ばったよ……」
「あ……ごめん、シィナ」
でも、と、コルトは言葉を続けた。
「ほら、頼まれてた子兎ってこのコのことだろう?」
丸くなった兎は両手にすっぽりと収まるほど小さかった。
シィナが顔を上げると半開きの目に光がさすほど見開き、
同時に歓声をあげる。
「すっげぇ!こいつだこいつ!うん、首輪もちゃんとついてるし!」
子兎の首には、毛が長くて気付かなかったが、細く赤い首輪がつけられていた。
背中側には小さな宝石と、その横に『ちゃむ』と書かれているプレートがつけられている。
「ちゃむ、って名前なんだ」
「うん、確かに賞金かけられてんのはそいつだな」
シィナは腰にかけている小さなバックパックから四つ折りにした紙を取り出しながら、言った。
依頼人が配布している広告だ。
コルトたちが探していたもの――それは迷子の子兎だった。
この森の近くにある街のギルドで見つけたのだ。
ギルドに行くあたり、もちろん2人は金欠。
そんなときに丁度入っていたのがこの依頼だった。

 【迷子の子兎】
―3日前から我が家の可愛い『ちゃむ』ちゃんが居なくなってしまいました。
 何者かに盗まれたのではないかと心配です。
 目印は白くて可愛いお顔、細くて繊細なおひげ、
 そして小さなクリスタルのついた赤い首輪とネームプレートの『ちゃむ』――
その下には親ばかとしか思えない程の爆発的高価格。
そして子兎の写真と飼主の写真(ふくよかでいかにも富豪そうな婦人)、
そして連絡手段が書かれていた。

もちろん、こんな一攫千金のチャンスは他のハンターたちも黙ってはいない。
子兎一匹などすぐに見つかるだろう。
そう考えた街の人間達は、街中兎探しでいっぱいだった。

しかし、コルトとシィナがこの街へ来た時には、依頼が出されて3日経っていた。
街中が兎ハンターだらけなのに、見つかってはいないということは…
2人は、凶暴な野生獣は生息している森を探してみることにしたのだ。
そして丸一日探した結果、今に至る。

シィナの手掌の中で、ふかふかとなでられてうっとりしている子兎。
その小さな生き物を見ているだけで、今までの騒動が嘘のように感じられた。
「とりあえず、もう遅いから今日はここで野宿でいい?シィナ」
「うん。ちゃむはカゴの中に入れといたし。じゃあ薪でも集めてくるか」
そうして、二人と一匹は、静かになった森で夜が明けるのを待った。





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ふがー。久々に書いたら長くなっちゃった。
やっと物探し篇は終わります。
次からは街へ戻るんだー。

090327修正。

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