[sor ato e ru]
青空の羽を秘める少年と、堕ちた神の使いに似て非なる者の話
【感想文】年上の女性というものは如何してこうも魅力的且つ神秘的なのだろう
森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』
2013/12/09~12/17
“ある日、突如として町に現れたペンギン。
この謎を解く鍵は、あのお姉さんにあるらしい。
少年とお姉さんの、温かくて少し切ないSF小説。
『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』とは
違ったテイストで描かれていながら、しっかりと
森見登美彦らしさの出ている作品です。”
p45「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか」
主人公の少年アオヤマ君は、10歳でありながら、日々の出来事や疑問に思うことをノートにとり、「研究」と称して、さまざまさものに興味を示している、ちょっと小難しくてかしこい少年。
ある日の集団登校中、彼は住宅地の中でペンギンの群れを目撃する。
なぜペンギンが現れたのかと疑問を抱きつつ、ある日、通っている歯科医院で仲良くしてくれるお姉さんが、ペンギンを生み出したことを知る。
p46「うまくいえないけれど、お姉さんはとてもふしぎで面白い。たいへん興味がある」
父は「なるほど」とうなずいた。
「それはすてきな課題を見つけたね」
読んでいるうちにいつのまにかファンタジーな世界へ引き摺り込んでゆくのは森見さんマジック。すこしふしぎなSF小説でした。
研究ノートをとる少年は、大人より大人っぽくみえる。
しかしその所々に「少年でなければ見えないもの」が書き表されている。
少年たちにとって、近所の森はアマゾンになる。地面に敷いた毛布は基地になる。
大人と言われる年齢だからこそ、そんな行動や考え方を持つ彼らに惹かれ、沁みる話。
アオヤマ君はすごく立派で、大人であるはずの私はとても見習いたくなる。
アオヤマ君の様子を見守りつつ、的確な助言をする、アオヤマ君のお父さんは本当に素敵。
かしこい少年と無邪気なお姉さんの組み合わせはいいものだ。
解説に萩尾望都さんを持ってくるあたり編集者わかってるなぁ(笑)
ちなみに、私の脳内では細田守監督で映画化余裕でした。
そして貸してくれた人曰く
今までの森見登美彦作品は主人公が自惚れ屋だったり自信過剰だったりちょっと冴えない系の男だったけれど、これは珍しくよくできた男だった、とのこと。そう言われれば確かにそうだね。
普通に小学生が読めそうなのでいつか角川つばさ文庫にでもなりそう。あ、でもおっぱいがNGかな。
ネタバレ話。
直前に読み終わった『アルジャーノン』といい、ラストに泣かされたお話でした。
ラストのその後は、大人になったアオヤマ青年がお姉さんと海を眺める姿があるといいな…。
でもきっといつかはアオヤマ君も大人になって全部思い出になってしまいそうな気もするよ。
ジュブナイル小説とは悲しいね。
そんなことを考えながら柴咲コウさんの「大切にするよ」を聞くと目からペンギン。
ふと思ったの。
これ、「お姉さん」が「お兄さん」だったら長野まゆみっぽい?
真昼の月を彷彿とさせる世界観でした。カバーイラストがイメージぴったりすぎる!
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