[sor ato e ru]
青空の羽を秘める少年と、堕ちた神の使いに似て非なる者の話
【ミントガム】
以前書いた小説。
微BL?
天然な先輩と気にかけている後輩。
先輩←後輩。
休日のある日、電話から彼の声が聞こえた。
今日休みだから、一緒にどこか行かないかと誘われて、良いですね、といつものノリで返事をした。
でも2人とも大勢の人に紛れるのは苦手だから、結局は俺が彼の家へ行くことになった。
荷物は財布とケータイと、携帯ゲームを持てば充分で、歩く早さは遅くもなく速くもなく。
いつものようにふらりと彼の元へ向かった。
「ども」
「お、来たな」
チャイムを鳴らし、ドアが開けられて、整った顔立ちの男が迎えてくれた。
彼が電話の声の主、
俺が唯一信頼している
大切な人。
「よっしゃ!やるか!」
気合いの入った声を張るものの、今からすることといえばゲームくらい。子供のようにはしゃぐ彼はこれでも俺より年上だ。
自分が脱いだ上着のポケットに手を入れたら、中には半端に数枚残った板状のガムの入っていた。
昨日このコートを着て出かけた時に、買ってポケットに入れたままだったのだろう。
「な、それ、貰ってもええ?」
ふと彼が俺の持っているガムを指差して言った。
「味、ミントですけど、」
俺が気にすると、んー、と唸って
「なんとなく食べてみたくなったん」
と、子供みたいに口を動かした。
いいですよ、と銀紙に包まれたガムを手渡した。
一口ずつ縦に口に入れてゆく。俺はただその姿をなんとなく眺めていた。
――いつ見ても、綺麗な顔だなと思う。
彼と恋仲になりたいという女性は今まで沢山見てきたから、異性から見て当然そう思うのだろうし、
恐らく、同性から見てもそうなのだろう。
小さめの口が女性らしくみえるのだろうか……
「くち?」
「え」
「そないガン見されとったら気になるよ」
目を細めて笑った。
冷たいミントの香りがした。
自分がこの人の傍にいるということが不思議だった。
二人で座ってゲームをしていた。
基本、会話はしない。彼は自分が集中しているときに話しかけられることを嫌う。だから俺も、迷う事なくゲームに集中した。
しばらくすると、肩に突然、ぼすっと衝動がきた。何かと思い、顔を向けると、彼の身体がこちらへ傾いて倒れてきていたのだ。
あまりにも意外な出来事に思わず身体を遠ざけてしまい、彼はバランスを崩して倒れかけたが、今の衝動で起きていた。
「すまん、ねた」
「いや、俺は大丈夫ですけど…」
別に、誰かに寄り掛かられてもそんなに驚きはしない。
ただ相手が相手だっただけに、思わずどきりとしてしまったのだ。
「あんまスキンシップとか、してるイメージがなかったもんで」
「スキンシップて」
それ程くっついてなかったやんと笑われたが、また体を起こして
「でもお前だけは特別」
と、今度はしっかりと安定するように、肩に頭を預けてくれた。
丸くて大きい瞳がちらりとこちらを向いて、またゲームの画面に向けられた。
また、自分の中で小さく、どきりと反応があった。
さっきより薄れたミントの匂いが鼻から肺へ渦巻いていく。
肩にかかる温い重さと柔らかな髪は、確実に隣にある。
なのに、この心臓の音はなんだろう。
ガムの匂いがしなくなった頃、俺は完全に彼の体重を支えていた。
ゲームはそっぽへ置かれ、幼い大人が静かに寝息を立てている。
俺はゲームをやめてその姿を見ていた。人の眠りを邪魔するのはさすがに気がひけた。
『お前だけは特別』
窓の外から風の音も聞こえない中、彼の言葉を思い出す。
その言葉は信じてもいいのでしょうか。
初めて会った時にかけられたあの時の声を、あなたを信じ続けていいということでしょうか。
俺はあなたの為に、
此処にいてもいいとうことでしょうか。
気がついたらブランケットがかけられた状態で目が覚めた。
「よく寝るこやなぁと思って、ふとんかけといたよ」
知らないうちに寝ていたらしい。
なんかすんません、と申し訳なくすると
「ええよええよ」と笑ってゲーム機からソフトを取り替えていた。
家を出る時に
「またな」
と言われたので
「はい」
と返事をして、外へ出た。
電灯の灯すらなくなった道を歩く。
また彼に会える希望があることが嬉しかった。
夜の冷たい空気はミントの香りによく似ていた。
2008/01/12
微BL?
天然な先輩と気にかけている後輩。
先輩←後輩。
休日のある日、電話から彼の声が聞こえた。
今日休みだから、一緒にどこか行かないかと誘われて、良いですね、といつものノリで返事をした。
でも2人とも大勢の人に紛れるのは苦手だから、結局は俺が彼の家へ行くことになった。
荷物は財布とケータイと、携帯ゲームを持てば充分で、歩く早さは遅くもなく速くもなく。
いつものようにふらりと彼の元へ向かった。
「ども」
「お、来たな」
チャイムを鳴らし、ドアが開けられて、整った顔立ちの男が迎えてくれた。
彼が電話の声の主、
俺が唯一信頼している
大切な人。
「よっしゃ!やるか!」
気合いの入った声を張るものの、今からすることといえばゲームくらい。子供のようにはしゃぐ彼はこれでも俺より年上だ。
自分が脱いだ上着のポケットに手を入れたら、中には半端に数枚残った板状のガムの入っていた。
昨日このコートを着て出かけた時に、買ってポケットに入れたままだったのだろう。
「な、それ、貰ってもええ?」
ふと彼が俺の持っているガムを指差して言った。
「味、ミントですけど、」
俺が気にすると、んー、と唸って
「なんとなく食べてみたくなったん」
と、子供みたいに口を動かした。
いいですよ、と銀紙に包まれたガムを手渡した。
一口ずつ縦に口に入れてゆく。俺はただその姿をなんとなく眺めていた。
――いつ見ても、綺麗な顔だなと思う。
彼と恋仲になりたいという女性は今まで沢山見てきたから、異性から見て当然そう思うのだろうし、
恐らく、同性から見てもそうなのだろう。
小さめの口が女性らしくみえるのだろうか……
「くち?」
「え」
「そないガン見されとったら気になるよ」
目を細めて笑った。
冷たいミントの香りがした。
自分がこの人の傍にいるということが不思議だった。
二人で座ってゲームをしていた。
基本、会話はしない。彼は自分が集中しているときに話しかけられることを嫌う。だから俺も、迷う事なくゲームに集中した。
しばらくすると、肩に突然、ぼすっと衝動がきた。何かと思い、顔を向けると、彼の身体がこちらへ傾いて倒れてきていたのだ。
あまりにも意外な出来事に思わず身体を遠ざけてしまい、彼はバランスを崩して倒れかけたが、今の衝動で起きていた。
「すまん、ねた」
「いや、俺は大丈夫ですけど…」
別に、誰かに寄り掛かられてもそんなに驚きはしない。
ただ相手が相手だっただけに、思わずどきりとしてしまったのだ。
「あんまスキンシップとか、してるイメージがなかったもんで」
「スキンシップて」
それ程くっついてなかったやんと笑われたが、また体を起こして
「でもお前だけは特別」
と、今度はしっかりと安定するように、肩に頭を預けてくれた。
丸くて大きい瞳がちらりとこちらを向いて、またゲームの画面に向けられた。
また、自分の中で小さく、どきりと反応があった。
さっきより薄れたミントの匂いが鼻から肺へ渦巻いていく。
肩にかかる温い重さと柔らかな髪は、確実に隣にある。
なのに、この心臓の音はなんだろう。
ガムの匂いがしなくなった頃、俺は完全に彼の体重を支えていた。
ゲームはそっぽへ置かれ、幼い大人が静かに寝息を立てている。
俺はゲームをやめてその姿を見ていた。人の眠りを邪魔するのはさすがに気がひけた。
『お前だけは特別』
窓の外から風の音も聞こえない中、彼の言葉を思い出す。
その言葉は信じてもいいのでしょうか。
初めて会った時にかけられたあの時の声を、あなたを信じ続けていいということでしょうか。
俺はあなたの為に、
此処にいてもいいとうことでしょうか。
気がついたらブランケットがかけられた状態で目が覚めた。
「よく寝るこやなぁと思って、ふとんかけといたよ」
知らないうちに寝ていたらしい。
なんかすんません、と申し訳なくすると
「ええよええよ」と笑ってゲーム機からソフトを取り替えていた。
家を出る時に
「またな」
と言われたので
「はい」
と返事をして、外へ出た。
電灯の灯すらなくなった道を歩く。
また彼に会える希望があることが嬉しかった。
夜の冷たい空気はミントの香りによく似ていた。
2008/01/12
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