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鈴の音、深淵の闇に響く_〈2〉

灯がこの行為――売春を始めて、一年程経っていた。売春をする人間の平均がどれくらいやり続けているのかは知らないが、灯はかなりの回数をこなしていた。
一年前、たまたま携帯のインターネットリンクから、とある裏の掲示板を見つけた。冗談半分で暇つぶしにと書き込んでみると、1人、反応があった。それが始まり。初めは女性に対してのみ慎重に行っていたが、ある日、女よりも高い金を払うと言った男を相手にしてから男も商売対象になった。抵抗はあったが、すぐにどうでもよくなった。灯はこの行為に自分の快楽など考えておらず、多く稼ぐことが出来ればそれで良いと思っていた。
今回はどちらの側だろう。入れる方か、入れられる方か。大抵は入れられる側なのだが、いくら快楽が関係ないとはいえ、少し辛い。そんなことを考えながら男について行くと、どうやら鼻の先に見える高層マンションへ向かっているようだった。
「アパートっていうからボロい所かと思ってたけど」
あ然とした灯に男は「集合住宅には変わりありませんから」と言って、やはりマンションのオートロックの入り口から鍵を使って入っていった。
一室のドアを開けると、傘はそこに、洗面所はそっち、と男は指を指して誘導し、先に奥へ消えた。
灯は言われた通りに行い、奥の部屋へ進むと広いリビングがあった。フローリングの床には2人掛けの白いソファとそれに合わせた低いテーブルが目についたが、他に目立つ物はない。隅の方に置かれた数少ない家具もモノトーンでまとめられており、綺麗に片付けられているせいかスペースが余りすぎている気がした。
「今、お茶を煎れますね」
「別にいいよ、そんなの」
本当なら早く始めて、金を受け取って帰りたかった。これから始まる行為に対する緊張をすぐにでも解き、終わらせたかった。
「シャワーとか浴びた方が良い?」
一応、直前に身体は洗った方が良いかと訊ねると「その必要はありません」と言われた。
「というか、そういう行為をする気は一切ありませんから」
「…はぁ?」
「貴方には私の話を聴いて貰います。それだけ結構です」
先程から感じ続けていた違和感の正体が現れた気がした。
「ああ、お望みでしたら本来の行為相応の料金はお支払いしますけど」
「…そうじゃなくて」
予想だにしていない男の言葉に灯は拍子抜けした。
ただ話すだけが目的だったら、わざわざ自分を呼び出し、買うという必要があったのか。
「意味わかんないんだけど」
「まあ、落ち着いてお茶でも飲んで下さい」
小さなテーブルに2つのティーカップが丁寧に置かれた。男はカーペットの上に座り、共に用意した角砂糖を1つカップの中へ入れた。








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