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【同情は妄想の産物か】

「左腕のない君の苦しみを左腕のある私が理解できる、と言えば嘘に成るだろうな」
あまりにも自然に言葉を出す彼に、驚きを隠せなかった。
「全く同じ感情になど成れはしないが、
 例えば、そうだな。これを食べてみてくれ」
そう言って彼が手渡したのは、一欠片のチョコレートだった。
言われるがまま口に入れれば、その甘さと香りが舌の上に溶ける。濃厚に味の存在を残し、形は失われた。
「どう思った?」
「甘、い」
「そうだろう」
彼もまた、同じチョコレートを口に入れた。
「うん、甘い」

「こんな風に私は君と限りなく似た感情を共有する事なら出来る」
ニヤリと笑う。
「つまり、だ。君、私の頬を抓ってみろ」
あまりに突然なのでどうしたものかと躊躇したが、彼は小声で
「別にマゾヒストの気は無い」と言った。
右腕を伸ばし彼の頬を抓る。口の端が上に向かい、滑稽な表情になった。
すると左腕を伸ばして私の左頬を抓り返された。
「痛っ…」
「このように限りなく似た痛みを共有する事も、不可能ではないはずだ」

もっと簡潔に伝えてくれ、と言えば、これが一番分かりやすいだろう、と彼は笑った。






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