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13.暗くて何も見えないよ

何も見えない。

何も感じられない。


なんだ、これ。


今までに

感じたことのない気分。




――【沈む個体は闇に融けるか】――





目を開けて、閉じる感覚はあった。
それでも、いくら瞬きをしても、暗い。
体の重さが感じなくて、試しに手を動かしてみた。
感覚はある。
仰向けに寝ているはずなのに背中に地面がついている気がしない。

視界は真っ黒。何も見えなかった。
ふわふわと静かに水の中を漂うようだ。
ただひとり

暗い深い


水の中。


誰にも咎められない
誰にも嗤われない
ここは自分だけが存在すると思える世界だった。
ここは自分すらも存在しないような暗闇だった。

目を閉じている感覚はないけど
目を開いている感覚もない。

けれど

とても痛い。


とても辛い。



ひとりでいることの恐怖。


ただただ怖くて
ただただ不安で
泣きたくなった。
泣きたかった。
けれど涙が伝う感覚もなくて。



だから必死になって声を出した。
やっぱり自分の声すら聞こえなかったけど
気がついたら必死に
そこに居て欲しい一人の名前を
ただ、叫んだんだ。








そこに、小さな光の一粒が見えた。
その粒は次第に光を増して、
それはひとつの光の塊になった。
眩しくて目を逸らした。
光が近付いて来て、
それは


光の



手――?


『     』



あぁ
声だ。



唾を飲み込んで
俺自身から、また声を出してみた。


「真っ暗なんだ」
それでもすぐに喉が枯れる。
「暗くて何も見えないよ」
目が熱くなって、じわじわ痛い。


『       』


聞き慣れた、懐かしくて、落ち着いた声。
おれの名前を


呼んでる――?



光の手が、おれの頬に触れた。



その光の先はおれが望む世界なのかはわからないけど
その手はとても温かくて、
きっと大丈夫、と
また笑える気がした。







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BGM/無音


光と火。
水と闇。

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