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【my シャングリラ!】

部屋に入ってから、背中を向けて座るあいつは俺と一言も喋らなかった。
ここへ来るまでの彼は、端から見れば不機嫌だと思われる行動が見られたのだが、長い付き合いの俺から見ればそれは大きな間違いだ。彼は落ち込んでいる。それも、相当。
恐らく、一人で居る時にまた仕事のことで何か言われたのだろうか。少し距離のある小柄な背中は何も語らない。

二人で居るときに喋らない事は特に異常ではなかった。しかし、そのせいか今は部屋に染み付いた煙草の臭いが余計鼻についていた。
以前、俺が仕事でヘマをして凹んだ時、あいつは何も訊かずただ話をして、励ましてくれた。あの時彼は何と言っていたかと思い出してみても、それが彼を励ます最善の方法なのかもわからない。
たどり着いたのは、やはり単純な言葉しかなかった。
なぁ、と呼び掛け、ゆっくりと近づいた。
「泣きたいなら泣けばいい」
あいつの小さな背中のに向かい、そっと囁いてみた。
「俺のでよければ胸を貸すぞ?」
あながち冗談でもないのだが、冗談混じりに言わなければ、こんな恥ずかしい事を言える訳がない。
「…馬鹿じゃねぇの」
無視をされるかと思われたが、応えてくれた彼の声は想像していた程暗くはなくて。
「お前こそ、俺に余計な心配かけんじゃねぇよ」
と、振り向いて拳で軽く胸を叩かれた。彼は立ち上がり、欠伸をした。
「お前とこうやって居られることも、一応幸せなんだよな」
振り向き、俺に言った。
不意をつかれたその一言に、目の前の霧が一瞬で晴れた様な気分になった。

そして気がつく。
もしかすると救われたのは俺の方だったのか、と。

荷物をまとめ、既に部屋から帰ろうとしている彼を呼びとめた。
「お前それ本気で言ってんのか」
「だったら何だよ」
「もう一回言っ」
「調子乗んな」






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