忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

PR

FANTASY STORY 5

「頼むから、ここは退いてくれないか」
先程よりも低く、唸る様に声を出す。

この時、野生獣なりに何かを感じとったのかもしれない。
フーッと一瞬強く威嚇したかと思うと彼は背をむけて森の闇の中へと走り去った。
姿が見えなくなったのを確認して、コルトは込めていた力を一気に抜いた。
先ほどまで硬くなっていた尻尾もふわりと脚に当たる。
「…おいで、もうでてきても平気だよ」
コルトが向けた目線の先―闇で深緑に染まった雑草の間から
姿を見せたのは、白い毛並の子兎だった。
まだ先ほどの野生獣に襲われたことが後を引いているのか
小刻みに体を震わせていた。
目線を合わせるように屈み、右手をそっと指しのべる。
「大丈夫。私は君を食べたりはしないよ」
子兎の赤い目はじっとコルトの目を見つめている。
しばらくして、ひょん、と小さい体が前へ動き、コルトの手元までやってきていた。
ひくひくと動く小さな鼻が可愛らしい。
コルトはゆっくりと左手を差し出し、両手で包むように子兎を胸の前に抱き上げた。
ころころと丸く、あと少しでも力を加えれば崩れてしまうような柔らかさだった。
震えは収まっていたものの、小さな心拍を肌で感じることが出来た。
動物といえど感情はあるはずだ。きっと底知れぬ恐怖だったに違いない。
死の可能性を感じる恐怖。
それほど残酷で纏わり付くものはない。
コルトの胸の中である記憶がざわめきだした。
「……もう、大丈夫だから」
不意に口にした言葉は子兎に向けられたものなのか、
あるいは自らに向けられたものなのか。
コルト自身もわからなかった。
子兎の鼓動は温かかった。





拍手



久々のファンタジーストーリー。
今日の更新で「中間後書き」にコメントを書く様にしました。
つたないファンタジーストーリー。
どこまでいつまで続くかな!(ぇ

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする

カレンダー

03 2024/04 05
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

はじめまして。

はじめて来られた方はカテゴリの「説明+α」をお読みください。

検索から来られた方へ

読みたい話の語を↓でブログ内を検索すると良いかもしれない。
よく語られる話
【九番隊】【らぶコミュ】
ブックレビューは【感想文】または
ブクログ読書メーターにどうぞ

AD