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F S 9 * ラクナ

「その立っている男は、突然青い砂漠の世界に落とされたんだ。
 自分がいた元の世界とは別の世界にね」
店主曰く、その青い砂漠はその物語の舞台らしい。
青い砂漠の上に立つ赤い服を着た青年は、砂漠の色よりも少し濃い青をした空を見上げている。
その空に雲はひとつもない。
もし彼が横に転がっている絵であれば、どちらが地面かわからなかっただろう。
ただ、青が広がるその世界。

「青色は綺麗だよね」
ただその絵に魅入る2人に店長の声がするりと耳に入ってくる。
2人が驚いて見ると、彼はシィナを指差して「キミの髪は綺麗な空色だ」と言った。
その言葉に照れたのか、はにかみながら頭を軽く掻いていた。
そして、店主はシィナに向けていた指をコルトへ向けて、言った。
「あなたは黒が似合う」
黒い髪、黒い瞳を持つコルトに、その言葉は響いた。
今はローブで顔を深く覆っているから黒髪は見えないはずなのに。
「でも、」
一呼吸おいて、コルトは言った。
バレてはいないはず。見られてはいないはず。
「黒は不吉の色です」
その言葉に店主はますます目をカーブさせ、まるで三日月のように目を細くして
「それは此処の世界の話でしょう」と言った。
「黒を持つ者は白を持つ者でもある」とも。
影に隠れていてよく見えなかったが、その細い三日月ような目は
左目が青く、右目が赤い色をしていた。――オッドアイ、というのだろうか。
深い色をした赤と青の瞳は、全てを見透かすかのように、じっとコルトに向けられている。


シィナは既に本を元の場所に戻して、コルトの横に立ってこっそりと服をひっぱった。
「(コルト、もう行こう)」
店主に聞こえないように、静かに彼は言った。
彼も、店主のその左右の瞳を見たのだろう。

「それじゃあ、陽も傾いてきたから店を閉めるよ」
そういって店主は手際よく本を大きな布に包み、片付けていく。
もしかしたら、先程のシィナの声が聞こえたのかもしれない。
「キミ達も旅人だろう?それなら早く宿へお帰り」
丁寧に本を束ね、2つほどの大きな包みにすると
今度はそれよりも大きな袋にその包みを入れ始めた。
本当に手際がいい。
思わずその姿をぼうっと眺めていたコルトを、店主はひらひらと手招きした。
店主は陽で少し赤くなった地面に「楽奈」と書いた。コルトは屈んで、それを見る。
「これは?」
「ラクナ、と読む。私の名前だよ」
異国の文字。それは彼が並べている本の中で見る文字とよく似ている。
「またあなたに会う気がするから」
そう言った彼の眼は三日月よりも細い曲線になっていた。
「ばいばい、旅人さん方」
そう言って楽奈は大通りとは反対側の薄暗い路地裏へと消えていった。
彼の座っていた所に彼の跡は無い。もう一度、彼の書いた“文字”を
見ようと地面を見たが、それも見当たらなかった。

本当に蛇のようだったな、と彼の消えた方をみて、コルトは思った。





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楽奈篇終了。
なっ…が…かっ…た!!

一話にまとめようと思ってたのに意外と長くなってしまいました。
だから二日連続更新なのです。多分もう二度とない。
文章を上手くまとめようとするのって難しい。


楽奈の詳しいことはまだ何も書けませんが
本館のギャラリーに絵なら載せてます。
興味のある方は見てみてください……なw(何)
本館はコチラ

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