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00.【それは、或る事が起こる数時間前。】

気が付いたらそこに居た、というのが相応しい。木々の葉の隙間から覗く陽が草花に当たり、緑の光を放っている。背の低い草に頬を撫でられ、背面に土の温かさを感じる。心地の良い鳥の声や風の音が、異空間とも感じられ、爽やかなほど心地が良かった。

「…だ………か…」
ふと、微かに言葉が聞こえた。
あぁ、誰か居るの?と少し名残惜しく夢心地の脳が目覚めていく。
「立てるか?」
見れば目の前には白い蛇。覚えのある姿と声に、なんとか状況を思い出すことができた。
「うん。大丈夫だよ、コーダ」
倒れている自分の胸の上に乗っているのは、唯一の旅の仲間である白蛇コーダだった。
エンは倒れる前、木に登り実を採ろうとし、足を枝にかける所を踏み外して落下、そのまま気を失っていたらしい。通りで、少し腰が痛い。
上を見れば赤々とした丸い実が手の届かない枝から自分たちを見下していた。
「しょーがない、街へ行くまで食事は無しだね」
「あんな果実なんて食べてもロクな事はないよ」
「コーダが嫌いなだけでしょ、それ」
服についた土を払い立ち上がった。
簡単に伸びをし、また森の中を歩き始めた。

エンが旅をする目的は、生きている内にこの世界をどれだけ知ることができるかという抽象的なものだった。しかしそれが自身に課せられた業だと、教えられた。それがこの旅に出る切っ掛けでもあった。
「今日は何か、楽しい事はおこるかな?」
毎朝の挨拶のようにコーダへ尋ねる。すると彼はゆっくりと諭すように、何も起こらない日なんて無いさ、と言う。
「それに気付いて、楽しめるかが大事なんだ」
その応えに、エンは相変わらず不思議な事を言う蛇だ、と思うが、その変わった考えに何度となく救われているのも事実だった。
「じゃあ、今日は特別な事が起こると言うことにしておくよ。決めた!」
「求めれば与えられる、だ」
何も起こらない日などない。起こる出来事を特別に感じられるかどうかは、その日を生きる者次第だ。
そしてまた、一人と一匹は道のない森の中を歩く。


――それは、ある特別な出来事に会う数時間前のプロローグ。



***
コーダはあざな。







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