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苦さとそれから成り立つ数式

「ありがと、そこおいといて」
ふわりと香る甘い匂いが、作られた活字に夢中な私を誘う。
「ついでに砂糖と牛乳出してくれると嬉しい」
「お前なぁ、たまにはそのままで飲んでみれば?」
「私からしてみればそのままだとこれは飲み物じゃないの」
そういいながら私は本を閉じ、彼から砂糖を受け取る。
父が海外の出張から帰ってきたときの土産のひとつ・飛行機内の砂糖。
その量の砂糖が、あとから入れる牛乳と合わさって丁度良いのだ。
「珈琲ってのは苦さの中に甘さを探す飲み物なんだよ」
「なにそれ」
矛盾した名言に私は笑った。
「苦いって思うのは、記憶の中に甘さがあるからなんだよ。甘いって思ってなかったら
 苦いとも思わないだろ。だから甘いという味覚をフルに活動させて、甘さを探す。
 それを楽しむから、美味い。そういう飲み物」
目の前に出された甘さと苦さの数式。
数学の苦手な私はXを上手くYにイコールでつなげられない。
「……よくわかんないんすけど」
「いいよ、わかんなくても」
置いてきぼりにされた気分。
窓ガラスの遠くから、金属バットがボールを思い切りはじく音がする。
「今のことが今わかったら、お前は随分いい人生送るぜ」
新しい数式に、私はまた首を捻る。

少なくとも、読み途中の推理小説の犯人がわかるまでは
あの数式も、この珈琲の苦さも、私に理解はできないだろう。





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